Scene プロフェッショナル 倉田 光吾郎氏

KURE5-56を愛用されている各界のプロフェッショナルが語る「Scene」。
第2回は、全高4m、重量約4.5トンの実際に人が乗って操縦できるロボット「クラタス」を製作したスチールアートの倉田光吾郎さんです。

「父親が西洋鍛冶で、鉄は子供の頃からとても身近でした」

もともと父親が西洋鍛冶という仕事をしていて、子供の頃から身近に作業を見て育ちましたから、それはベースにありますね。
西洋鍛冶というのは、農具や包丁を叩き出してつくる和鍛冶とは違って、鉄柱や鉄棒を加工して組み合わせて門扉や手摺などをつくる建築関係に近い鍛冶職人です。最近は溶接も使いますけれど、本来は溶接技術の無い時代のものですから、鉄の棒をタガネで裂いてクサビで穴を広げて格子や飾りを作っていくんです。
父親がそれを志した頃は、まだ日本には西洋鍛冶というものがほとんどなくて、ベネチアの方の学校に通ってマスターしたみたいですね。

そういう環境で育ちながらも、私自身は西洋鍛冶という仕事には、まったく興味を持ちませんでした。父親に反抗して背を向けたという感じでもなく、ただ興味が無かったんですね。ま、鍛冶仕事というのは危険ですから、父親も率先してやってみろとは言いませんでしたけれど。

ただ、そういう状況でも、毎日身近に接していると自然に身に付くみたいで、ちょっとやってみようと思ったら意外にできたりするんですね。
高校の夏休みだったと思いますが、やってみたいなと思って、父親の工房で簡単なものを作ってみたんです。
やってみたら、結構面白いし、自分でもなかなかの出来映えだなと思ったものですから、それをコンテストに出品してみたんですね。そしたら、いきなり佳作に入選してしまって。
好きなことを好きなようにやって誉められるわけですから、やっぱり嬉しくなりますよね。
言ってしまえば、それがそのまま現在まで続いているようなものですね(笑)

「アートというよりも道具、やっぱり使えるものを作りたいですね」

よく、私の作ったものをアートと評してくれる方がいらっしゃいますが、私の気持ちはちょっと違います。
西洋鍛冶で作る門扉とか手摺とかも、一見アート作品のように見えるものが多くありますが、それらはすべて用途があります。
そういう基本的なルーツがあるのかもしれませんが、ただカタチがあるというよりも、自分で使えることが私にとっては大切で、どこかで実用の意識が強くあります。

なので今まで、さまざまなものを作ってきましたが、多くの作品は、使うことや動かすことを前提にしています。
例えば、以前に作ったMacintosh-G3。もともとはホワイトとブルーのとても美しくて斬新なデザインのアップルコンピューターでしたが、どうしてもその箱の形に馴染まなくて自分で作り直したんです。モチーフは、足踏みミシン。デザインは奇抜ですが、タイプライター風のキーボードをはじめ、電話機のマウスや、電話ダイヤルのテンキー、足踏みによるシフトキーまで、すべて動作します。

国立劇場でのオペラ「フィガロの結婚」の舞台設計を依頼された時にも、舞台デザインというよりも、各幕ごとに背景が変化することによって情景が変わる舞台装置としての設計に心が動かされたのを覚えています。
そうしたことを考えると、私が実物大ロボットの製作を行うのは必然だったかもしれませんね。

「全高4m、重量4.5トンのロボットを動かすと興奮します」

最初に作った実物大ロボットは「装甲騎兵ボトムズ」に登場するスコープドッグです。全長4mの迫力あるボディですが、残念ながら動きません。いわば、鉄で作った原寸大のプラモデルといった感じです。
ちょっと物足りないなと思っていたところに、サッカーボールを200km以上のスピードで蹴るフリーキックマシンの制作依頼が来ました。この時に、油圧制御をはじめて使ってみて、これなら人が乗ったロボットを動かすことができるんじゃないかって思ったんです。
実際に4mもの鉄のロボットに人が乗って動いたら、どれだけ怖いのか、どれだけ面白いのか、まったく想像できなくて、とにかくその感覚を味わってみたくて作ったのが、人が乗って操作する実物大ロボット「クラタス」なんです。

「KURE 5-56との出会いは、本格的に鉄に触れる以前からですね」

私にとっては鉄というのは、もっとも扱いやすい素材ですね。プラスチックや樹脂は加工しやすいですが弱いし、木材は変形させるのが難しい、逆に粘土みたいなものはカタチが定まらない。
暖めれば軟らかくなって、冷やせば硬くなる、切るのも組み合わせるのも自由自在の鉄は、実は一番作業しやすいんです。

という鉄とKURE 5-56ですから、それはもう一心同体みたいなものですね(笑)
サビ落としなんかにも、もちろん使いますけど、やっぱり一番気に入っているのはKURE 5-56の浸透力ですよね。
ちょっと固着したネジにシュッと噴きかけるのは、もう条件反射のようになっていますね。
子供の頃から自転車やバイクに乗っていて、ちょっと変だなと思うとすぐにKURE 5-56をシュッとしていましたから、今にして思えば、本格的に鉄に接する前に、すでにKURE 5-56は日常にありました。
最近は、こういう潤滑商品もいろいろ出ていますけど、迷ったことがないですね。そういう意味では、鉄とKURE 5-56ではなくて、私とKURE 5-56が一体なのかもしれませんね。

「まだまだ発展途上です、倉田と『クラタス』にご期待ください」

自分の楽しみで好きなように作ってきた「クラタス」も、気が付いたら世界から注目されるようになって、自分でもちょっとビックリしています。
でも、目の前に道があれば、とりあえず歩き始めてみようというタイプですから、いろいろな可能性にチャレンジしていきたいですね。
そういう意味では、「クラタス」もまだ発展途上です。今後にぜひ期待して欲しいですね。

Profile

水道橋重工 CEO/Founder/Artist 倉田光吾郎
1973年 東京生まれ
1991年 FROM-A-THE-ART 佳作
1992年 個展 渋谷GardianGarden
1993年 HandsGrandPrix内田茂賞
1999年 新国立劇場 二期会特別公演 オペラ『Le Nozze di Figaro(フィガロの結婚)』舞台装置デザイン及び製作
2000年 個展 TEMPERANCE 銀座YajimaGalerie
2003年 ベルリンで一年休養後2004年活動再開
2005年 個展Nurseglove水道橋特設会場
2014年 映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー』にクラタス出演