Story 私にとっての5-56 寺井 則彦氏

様々な世界で活躍するリーディングパーソンへのスペシャルインタビュー「Story 私にとっての5-56」。
第5回は、世界のトップパティシエだけが名を連ねる「ルレ・デセール」の数少ない日本人会員でもある実力派パティシエの寺井則彦さんにお話を伺います。

「自由に作る楽しさと、
喜んでくれる人の笑顔が励みでした。」

Q:最近では、男性が料理を作るのも珍しくなくなりましたが、お菓子作りとなると、まだ少し男性にはハードルが高い気がします。

寺井則彦さん(以下/寺井):そうかもしれませんね。ただ、子供の頃の私の感覚は、工作や図画、プラモデル作りに近いんですよ。
子供の頃、ヤキソバだとか簡単な料理を作っていたのですが、ある時、お菓子を作る機会があって、お菓子って材料が小麦とか砂糖とかバターとか、カタチの無いものなんですね。
カタチの無いところから、自由に作れるのが、とても楽しいと思ったんです。
粘土細工で工作をする感覚で、そこに味という要素が加わるので、さらに複雑で面白いと思ったんですね。

Q:その気持ちが寺井さんをパティシエの道に進ませたということでしょうか。

寺井:それと、人を喜ばせたいという想いですね。一目見て「スゴい」と感動してくれる。一口食べて「美味しい」と楽しんでくれる。私の作ったもので、みんなが喜んでくれるのが、何よりも励みになるんです。

「フランス各地に
地域に育まれた美味しさがありました。」

Q:調理師学校を卒業後、「ルノートル」「ラ・ミ・デュパン」を経て、数年でフランスに渡られます。本場で修業をしたいというお気持ちだったのでしょうか。

寺井:修行というよりも確認ですね。技術的にはそれなりに習得できたと感じていましたから、自分の習得したものと本場ではどれほど違うものか確認したいと考えたのです。

Q:実際にフランスに行かれてみていかがでしたか?

寺井:行った直後は言葉の問題もあって確認どころではありませんでしたが(笑)
慣れてくるといろいろなことに気が付きました。
最初に感じたのは食材の違いですね。フルーツや乳製品など、いろいろな食材の味と質が日本とは違うんです。当然、それによって味の構成が異なってきます。
それと、その食材の違いにも関係するのですが、地域によって味や作り方の違いがあります。
フランスと一口で言っても、例えば北ではバターを使い、南ではオリーブオイルを使うといった大きな違いがあるんです。つまり、本場自体が多様だったわけです。

Q:それがフランス各地やベルギーで勤務した理由ですか。

寺井:そうですね。それぞれの味や作り方の違いは、結局、地域に根ざした文化の違いによるものなので、それぞれの地域で伝統的に作られてきた味を知らなければ、フランスを知ったとは言えないと思いました。

Q:寺井さんご自身に、伝統的な味へのこだわりがあるのでしょうか。

寺井:特にフランスの伝統そのものにこだわりがあるわけではありませんが、私の作り出す味もそうしたフランスの伝統の味の延長線上にあるとは思います。

「KURE 5-56のように
歴史を積み重ねてきたものには信頼があります。」

Q:これまで歩んで積み重ねてきたものが、今の寺井さんのベースになっているわけですね。

寺井:自分が歩んできた道に対する思い入れはありますね。この道具箱はフランス時代から使っているのですが、当時、航空会社のシールをたくさん貼ったスーツケースを真似て、仕入れたフルーツのシールなどを貼っていました。
ちょっと子供っぽいなと思っていたのですが、今では航空会社のシールよりずっと貴重なものになっています。

Q:寺井さん自身を語るものですね。

寺井:この古い業務用ミキサーも、ベルギー時代に使っていたものと同じものを日本の骨董器具屋さんで見つけて購入しました。
スイス製で調理器具のロールスロイスと言われるほどの最高峰のミキサーです。当時は自分が個人所有するなんて思ってもみませんでした。

Q:これは今でも使われていますか?

寺井:現役としては使っていませんが、今でも動かせるように整備はしてあります。
これを購入した時はすでに動きが悪くなっていて、使えるようにするには全面的な整備が必要でした。その時に固着した各部のネジなどを緩めるのにKURE 5-56が重宝しましたね。
このミキサーを実際に調理に使うことは基本的にありませんが、それでも細心の注意を払って、食材には関わらない機械の裏の部分のネジに、KURE 5-56を吹きかけて使っていました。
使う量はほんの少しですが、そんな少量でもしっかり効いてくれて、ネジが緩んだのには驚きました。

Q:道具を長い間大切に使うということが、寺井さんのポリシーでもあるのですね。

寺井:ただ古いものが好きということかもしれませんが、調理やお菓子に限らず、長い歴史を積み重ねてきたものには惹かれますね。
趣味でビンテージカーを何台か所有していますが、実はミッレ・ミリアというヒストリックカーのイベントレースにも参加しているんです。
ミッレ・ミリアは、数日間かけてゆっくりと公道を走るイベントレースなのですが、やはり古いクルマなので途中で修理や整備をすることもあります。その時にも、KURE 5-56は必要不可欠ですね。
KURE 5-56も昔からありますが、その辺りも私がKURE 5-56を信頼する理由のひとつかもしれません。

「伝統の美味しさと新しい美味しさを
提供していきたいです。」

Q:寺井さんのお店「エーグルドゥース」も、フランス菓子の伝統を受け継いでいくのでしょうか。

寺井:受け継ぐだけでなく、常に新しい提案もしていきたいと思っています。
お客さまの求める美味しさを提供しつつ、お客さまの数歩先を行く斬新さを提案していきたいと思っています。
せめて平均点を、と思うのですが、それさえも難しいですね。

Q:「エーグルドゥース」の洋菓子はその美しさでも高い評価を得ていると思います。

寺井:洋菓子はエンターテイメントですから、見た目の美しさは大切だと思います。
ただ、インパクトだけのエキセントリックなカタチでは無く、その造形から美味しさが伝わる「美味しさ感」のあるカタチが大切だと思います。
見た目でも味でも、お客さまに満足していただく、それが何より大切だと思っています。

Q:今後の「エーグルドゥース」について抱負があればお聞かせください。

寺井:とにかく長く続けていきたいと思います。お客さまの気持ちに応えながら、新しい提案をしていくのには、長い時間が必要です。フランスの菓子が長時間をかけてここまで来たのと同様に、新しい「エーグルドゥース」の洋菓子を長い時間をかけて育てていきたいと思います。

一流パティシエとして、日本だけでなく世界的にも高い評価を得ている寺井則彦さんですが、その気持ちはまだまだ先に向かっているようです。伝統を大切にしながら、更なる新境地の開拓を進める寺田さんのご活躍に注目していきたいと思います。

Profile

寺田則彦
1965年 神奈川県横浜生まれ
1985年 フランス菓子「ルノートル」に勤務
1990年〜 フランス、アンジェのパティスリー「トリアノン」をはじめ、ベルギーの「ダム」、フランス、アルザスの「ジャック」、フランス、パリにある「ジャン・ミエ」など名店で勤務
1995年 「ル・コルドンブルー」パリ校、東京校で教鞭をとる
1996年 「オテル・ドゥ・ミクニ」のシェフ・ドゥ・パティシエに就任
2003年 第8回「クープ・ド・モンド・ラ・パティスリー」世界洋菓子コンクールで総合第2位
2004年 「エーグルドゥース」をオープン
2005年 ルレ・デセール会員に選出