Story 私にとっての5-56 安島 正二氏

様々な世界で活躍するリーディングパーソンへのスペシャルインタビュー「Story 私にとっての5-56」。
第6回は、メジャーブランドのパタンナーとして長年活躍され、現在は独自のブランド<copano 86>を主宰するパターン業界の巨匠、安島正二さんです。

「技術だけでなく、
感性も磨くことで真のパタンナーと言えます。」

Q:安島さんはパタンナーという仕事を、どのようなものだとお考えでしょうか。

安島正二さん(以下/安島):一般的には、デザイナーの考えたデザインを実際の型(パターン)に起こして、具体化していくということですが、私はデザイナーのセンスや感性、考え方を受け止めて、それをカタチにし、具現化していく仕事だと思っています。
ひとつの洋服が作られていく過程での、要(かなめ)のような位置付けともいえるかもしれません。

Q:優れたパタンナーにとって必要なものはどのようなこととお考えですか。

安島:パタンナーとして正確にパターン化できる技術は何よりも必要ですが、パタンナー自身にもデザイナーの感性を受け止めて具現化できるだけの感性が必要になってくると思っています。

Q:技術ももちろんですが、その感性の部分も磨かなければならないのですね。

安島:例えば、通勤で同じ時間に同じ電車に乗ったとしても、出会う人、すれ違う人は違いますし、天気や光の加減によって街の風景も違います。
そうした中で、心を惹かれた色、光、トーンをしっかりと記憶に留めるようにしています。

「現在に目を向けながら、
過去を学んでいくことが大切です。」

Q:目に入るすべてのものが、感性を磨く素材ということですね。

安島:そうですね。行き交う人の洋服のコーディネーションを見て、なにか新鮮な組合せはないかと考えたり、気になる色を見つけた時に、この色を生地で再現するとしたらどうなるだろうと考えたり。街中の風景で独特の光を感じたら、この光感を再現するにはどんな素材があるだろうとか。

Q:直接、洋服やファッションに関係しないものにも目を向けるということでしょうか?

安島:むしろ、洋服やファッションから離れたものの中から、いかにファッションの要素を見つけ出してくるかだと思います。
ただ、そうして日常の中で感性を磨く作業というのはすでに当たり前のことになっていますし、私自身が現代に生きているわけですから、時代の空気感のようなものは自然に入ってきます。
自分から積極的に吸収しようとしているのは、むしろ「過去」です。

Q:「過去」ですか?

安島:当然ですが、私たちの日常にあるのは「現在」です。「過去」というのは意識的に求めていかなければ得ることができません。
そのために、ビンテージものをはじめとする古い洋服の研究は常に欠かしません。その他にも古い写真を集めた写真集や、映画、絵画など、さまざまな資料に積極的に触れるようにしています。
1900年くらいの古い写真、何気ないポートレート写真からインスパイアされてデザインイメージが生まれることもあります。

「本質に忠実なファッション。
それが<copano 86>です。」

Q:そうしたイメージの膨らみが、ご自身のブランド<copano 86>を立ち上げて、安島さんご自身でデザインからパターンまで一貫して行うようになったきっかけだったということでしょうか。

安島:立ち上げた頃は原宿ファッションなどの最盛期で、パターンの仕事だけでも非常に忙しかったのですが、バブルが崩壊した後、ファッション業界全体が下火になり、パターンの受注も少なくなってきた時に、それならばと自分でデザインを起こすようになりました。

Q:<copano 86>のポリシーはありますか。

安島:感覚は「現代」ですが、その根底にヨーロッパの歴史が築いてきたディテールやメンズテーラリングテクニックの要素を込めていきたいと思っています。

Q:古いものを活かしていきたいということでしょうか。

安島:「活かす」と言うよりは「継承していく」という感覚です。ヨーロッパの由緒ある服のディテールや技術には必ず意味があります。
現代の量産性優先の中で消えていきつつある基本や本質に関わる部分、いわば伝統的な洋服作りの作法のようなものを、流行に関係なく大切にしていきたいと思っています。

Q:洋服作りの原点となる技術や作法を大事にされているのですね。

安島:例えば<copano 86>では、すべてのパターンを今でも手描きで行っています。現在は、ほとんどのパタンナーがコンピューターの画面上でラインを引いていますが、<copano 86>ではすべての線を一本一本手で引いています。
洋服のラインはその一本一本がある意味では生き物です。思いを込めて手で描くことで微妙なラインのカーブが生き生きとしてくる。その躍動感のようなものを大切にしたいというのが私の考え方です。

「KURE 5-56は、
私の気分転換も支えています。」

Q:道具などにこだわりはありますか。

安島:道具そのものに特にこだわりはありませんが、やはり使い慣れたものの方が使いやすいので大切にしています。裁ちバサミだとか、動きが悪くなるとKURE 5-56をすぐに吹きかけますね。

Q:KURE 5-56は必需品ですか。

安島:ミシンなどは専用のオイルを使うのですが、KURE 5-56はいつも現場にあって何気なく使っていますね。
それと仕事ではありませんが、日常生活でもよく使っていて、家族で趣味の園芸をやる時に道具の管理にKURE 5-56を使っています。例えば小さなスコップはサビやすいので、使い終わってから泥汚れを落として、サビの防止にKURE5-56を吹きかけて愛用しています。
錆だらけの道具では気分転換にもなりませんからね(笑)

「洋服の本場ヨーロッパを唸らせる。
それが私の目標です。」

Q:<copano 86>を含めて、安島さんの今後の抱負などお聞かせください。

安島:海外で勝負をしていきたいと思っています。現在も、すでに韓国には出品していますし、近いうちに中国進出もしたいと思っています。東アジア方面は具体的に展開し始めているのですが、将来的にはヨーロッパに目を向けたいと思っています。

Q:ヨーロッパでもクールジャパンとして日本のファッションは人気ですからね。

安島:ただ、私が望んでいるのはそうした一過性のブームではなく、いわば洋服の老舗としてのヨーロッパを唸らせたいということです。
テーラードの本格的な紳士服となると、まだまだ日本はヨーロッパに及ばない部分が多くあります。昔からずいぶんと研究を重ねて、最近になって私もようやく自信を持てるようになってきました。
そろそろヨーロッパの老舗とも肩を並べることができているのではないかと思っています。
一度、洋服の本場ヨーロッパに持って行って「日本もなかなかやるな」と言わせたい。それが私の目標です。

時代に流されることのないファッションの本質を継承し、その本質を現代と融合し具現化することで流行の最先端を歩んでいる安島正二さん。その見つめる視線の先は、洋服の本場ヨーロッパを見据えているようです。さらなるご活躍に期待したいと思います。

Profile

安島正二(あじま しょうじ)
1968年4月 株式会社ジュン入社
チーフパタンナーとして企画生産アトリエにて従事
1985年4月 株式会社カーブプランニング設立
企画生産アトリエ、ファクトリーを兼ねる
2005年8月 自らがデザインとパターンを手がけるオリジナルメンズブランド<copano 86>を立ち上げる
伝統と格式あるテーラーリングを基盤とし、ヨーロッパやアメリカの歴史ある洋服文化を背景に
「着る」と言う本質的な楽しさ・遊び心・メッセージ性を
日本の職人技術に裏付けされた「物造り」で表現
http://copano86.com/
2009年9月 ニューヨーク・カプセル展への出展が選抜により決定
(ニューヨーク高島屋、ボストンステルス、バーニーズなど)と共に参加
2012年1月 フィレンツェ「PITTI IMMAGINE UOMO」に参加
フィレンツェにて1月と6月の年2回行われるメンズファッションブランドの展示会で、
3万人を超える全世界のプレスやバイヤー達が集結することでも有名
2012年9月 A/WミラノDolce&Gabbanaセレクトショップ「Spiga 2 」にて取り扱い決定
現在に至る